北海道大樹町にて、新たな衛星管制局を設置し、運用を開始すると発表した。
建設・運用を行うのは、北海道大樹町を拠点に宇宙港「北海道スペースポート」の運営や宇宙関連企業の誘致・支援を行うSPACE COTAN株式会社と、超小型衛星の開発や運用を行う株式会社アークエッジ・スペースだ。

今回設置された新施設は、次世代海洋インフラ構築の研究や事業化に活用されるもので、静岡県牧之原市に続く2拠点目の地上局となる。今回の設置により、大樹町で活動する宇宙関連企業・団体は13に拡大し、町とSPACE COTANが掲げる宇宙産業拠点づくりの取り組みが一層進展した。
衛星通信は弱い電波を扱うため、天候や周辺の電波干渉の影響を受けやすいが、大樹町は晴天率が高く、電波環境が安定していることに加え、自治体による宇宙事業支援が整っている点が評価されたことが選定理由だ。
新設された地上局は、直径3.9メートルのパラボラアンテナを備え、Sバンド、Xバンド、Kaバンドに対応。遠隔操作による衛星運用が可能であり、アークエッジ・スペースの衛星運用基盤の中核を担う役割を持つ。
地上局では、海洋通信・観測・IoTの三分野で技術実証と研究開発を行う。通信分野では、船舶の識別装置AISを拡張したVDES規格を活用し、複数の小型衛星による通信網の構築を目指す。これにより、陸上インフラに依存せず、遠洋でもリアルタイム通信が可能な環境を整備し、海上輸送の安全性と効率化を図る狙いだ。
海洋観測では、マリンレーダなどの電波を衛星で観測し、AIS信号に依存しない船舶位置の把握技術を研究。信号の切断や偽装が行われる状況でも正確な船舶位置を推定できるようにし、海上安全に寄与する。
さらに、衛星IoT技術を用いて、陸上や洋上のセンサが取得した気象・海洋・物流などのデータを収集。通信網が未整備な地域からもデータを取得できる仕組みを整えることで、広域かつ持続的な観測体制を構築することを目指している。
ライター:新多 るいと|Nitta Ruito


